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エアシャワーのプレフィルター

目次

クリーンルームやエアシャワーの運用において、「プレフィルター」は空気中の大きな異物を最初に捕集する極めて重要な役割を担います。目に見えない微細な粒子を取り除くHEPAフィルターが「真打」とするならば、プレフィルターは文字通り、その性能を守り抜くための「最前線の盾」と言える存在です。

本記事では、プレフィルターの基本的な役割や種類、材質による性能の違い、具体的な使用シーン、そして見落としがちな交換時期や管理方法にいたるまで詳しく解説します。

プレフィルターの基本知識

プレフィルターとは何か?(一次除塵フィルターの役割)

プレフィルターは、空気清浄システムにおいて最初に空気が通過する「一次除塵(いちじじょじん)」を目的としたフィルターです。エアシャワーの吸込口や、空調ユニットの最上流部に設置されます。

その主な任務は、空気中に浮遊する粗大な塵埃(じんあい)を物理的に遮断すること。具体的には、作業員の衣服から剥がれ落ちた繊維くず、毛髪、砂埃、あるいは虫の侵入といった、肉眼で確認できるサイズの異物を確実にキャッチします。この段階で大きなゴミを取り除いておくことで、システム全体の清浄効率を安定させる基礎が作られるのです。

HEPAやULPAとの違いと補助的役割

多くの現場で混同されがちですが、プレフィルターとHEPAフィルター、ULPAフィルターでは、ターゲットとする粒子のサイズが根本的に異なります。HEPAやULPAは、0.3μm(マイクロメートル)以下の、細菌やウイルスレベルの微小粒子を対象とする超高性能な部類です。

これに対し、プレフィルターは数μmから数十μm以上の「比較的大きな粒子」を主戦場としています。高性能フィルターは非常に繊細な構造をしており、大きなゴミが直接当たるとすぐに目詰まりを起こして使い物にならなくなります。そこで、プレフィルターが「補助役」として手前で泥臭い汚れをすべて引き受けることで、高価なメインフィルターの寿命を最大化し、装置のランニングコストを劇的に抑えることが可能になるわけです。

クリーン機器や空調設備における使用例

プレフィルターの活躍の場はエアシャワーだけに留まりません。クリーンベンチやクリーンブース、パスボックスといった局所クリーン設備はもちろん、工場の建物全体を管理する大型空調機(AHU)の1次側にも必ずと言っていいほど組み込まれています。

特に、外部から空気を取り込む「外気処理」の場面では、季節によって飛散する花粉や黄砂をブロックするための生命線となります。あらゆるクリーン設備において、「清浄化の第一歩」はプレフィルターから始まると言っても過言ではありません。

各種エアフィルターの比較

フィルター名 フィルター目地サイズ どんな粒子を
捕獲できるか
どんなシチュエーションに向いているか 特徴
HEPA 0.3μm粒子を99.97%以上 バクテリア、海塩粒子、顔料、油煙 食品工場、医薬品工場、一般クリーンルーム クリーンルームの「心臓部」。除菌・集塵の標準的メインフィルター。
中性能 1μm〜5μm程度の微小粒子 かび、花粉、小麦粉、セメント粉塵 ビル空調、産業用クリーンルームの省エネ対策 プレとHEPAの中間を担い、清浄度と電力コストのバランスを最適化。
活性炭 分子レベルの吸着 有機溶剤のガス、不快な臭気成分 化学工場、塗装現場、研究施設、脱臭対策 物理的なゴミではなく「臭い・ガス」を化学的に除去することに特化。
ULPA 0.1μm粒子を99.9995%以上 ウイルス、タバコの煙、超微細塵 半導体製造、ナノテクノロジー、精密機器組立 HEPAを超える圧倒的な清浄度を実現する、高性能フィルター。
プレ 10μm〜100μm以上の粗大な塵埃 毛髪、粗い砂、砂糖、大きなホコリ 全てのエアシャワーの一次除塵、HEPAの保護 安価で交換が容易。後続の高級フィルターの寿命を延ばす「門番」。

主な種類と材質の違い

不織布タイプと金属メッシュタイプの違い

プレフィルターの主流は、ポリエステルやポリプロピレンなどの化学繊維を絡み合わせた「不織布(ふしょくふ)タイプ」です。繊維の密度や厚みを自由に調整できるため、高い捕集容量と低コストを両立しており、エアシャワーの標準仕様として広く普及しています。

一方で、過酷な環境下で重宝されるのが「金属メッシュタイプ」です。ステンレスやアルミの細い線を編み込んだもので、油分を多く含む現場や、高温多湿な環境でも劣化しにくい強みがあります。不織布に比べて初期コストは上がりますが、物理的な耐久性は群を抜いています。

使い捨てタイプ vs 再生可能タイプのメリット・デメリット

運用面では、大きく「使い捨て」と「再生可能(洗浄可能)」の2つの選択肢に分かれます。

「使い捨てタイプ」は、汚れたら新品に差し替えるだけというシンプルな運用が最大の特徴です。メンテナンスの工数を削減でき、常に安定した初期性能を担保できるため、衛生管理が厳しい医薬品工場などで推奨されます。デメリットは、交換のたびに廃棄物が発生し、継続的な購入費用がかかる点です。

「再生可能タイプ」は、サランネット(合成樹脂網)などが代表例で、水洗いや掃除機での清掃によって繰り返し使用できます。ランニングコストを極限まで抑えられる点が魅力ですが、洗浄・乾燥のプロセスでろ材が傷んだり、乾燥不十分によるカビの発生を招いたりするリスクがあるため、管理の徹底が求められます。

用途(食品・医療・工業)別の選定ポイント

業種によって、最適なプレフィルターの選び方は変わります。

食品工場であれば、抗菌・防カビ加工が施された不織布が必須です。湿気や栄養源となる有機物が多い環境下での二次汚染を防ぐためです。医療・ライフサイエンス分野では、ガス滅菌への耐性や、発塵(フィルター自体から糸くずが出ないこと)の少なさが重視されます。工業分野の塗装ラインや半導体工場では、シリコンフリーの材質を選定するなど、製造プロセスに悪影響を与えない素材選びが成功の鍵を握ります。

プレフィルターの性能と仕様

捕集効率(JIS規格などの基準)

フィルターの性能を客観的に判断する指標として、JIS B 9908で規定された「質量法(重量法)」が用いられます。これは、試験用の粉塵をフィルターに流し、通過前後の重量差から「どれだけの重さのゴミを捕まえられたか」をパーセンテージで表したものです。

一般的なエアシャワー用プレフィルターは、質量法で60%〜80%程度の捕集効率に設定されています。これ以上の効率を求めすぎると、後述する「圧力損失」が大きくなり、装置全体のパフォーマンスを低下させる原因となるため、最適なバランスを見極める必要があります。

通気性・耐久性・防塵性能のバランス

フィルター選定において最も難しいのが、「ゴミを捕る力」と「空気を通す力」のトレードオフです。フィルターの目を細かくすればゴミは捕れますが、空気の流れが悪くなる(=圧力損失が高くなる)ため、送風機のモーターに過度な負荷がかかり、電気代の上昇や故障を招きます。

優れたプレフィルターとは、適度な厚みを持ちながらも通気性を維持し、かつ長期間使用しても形が崩れない「耐久性と低圧損のバランス」に秀でた製品を指します。

プレフィルターを通過する粒子サイズの目安

プレフィルターが主に防御するのは、おおよそ10μm(0.01mm)以上の大きさの粒子です。これは、スギ花粉(約30μm)や髪の毛の太さ(約80μm)を優にカバーする範囲です。

逆に、それ以下の微細な粒子(タバコの煙や細菌など)はプレフィルターを通過しますが、これらは次段に控える中性能フィルターやHEPAフィルターの役割。「大きなゴミは入り口で、小さな粒子は奥で」という段階的なフィルタリング構造を理解することが、適切なメンテナンスへの第一歩です。

交換時期とメンテナンス方法

汚れ具合や目詰まりの確認ポイント

プレフィルターの状態を確認する最も簡単な方法は目視です。新品時に白かったフィルターがグレーや黒に変色し、表面にホコリの「層」ができている場合は明らかに末期症状です。また、エアシャワーのノズルから出る風が「弱くなった」「ムラがある」と感じる場合、その原因の8割以上はプレフィルターの目詰まりにあります。

より高度な管理を行う現場では、マノメーター(差圧計)を設置し、フィルター前後の圧力差を数値化します。初期状態から抵抗値が一定以上に上がった時点で自動的にアラートを出す運用が、トラブルを未然に防ぐ最も確実な手法です。

一般的な交換目安(1~3ヶ月)

交換周期は現場の環境(人の出入り、外部との遮断状況)によって大きく左右されますが、標準的には1ヶ月から3ヶ月が目安となります。

例えば、人の出入りが激しい大規模な食品工場や、粉塵が発生しやすい段ボールを取り扱う現場では、1ヶ月を待たずに限界に達することもあります。逆に、清浄度が高い前室を挟んでいる場合は3ヶ月程度持たせることも可能ですが、「汚れてから変える」のではなく「汚れる前に変える」定期交換の習慣が、結果としてメインフィルターの保護に繋がります。

定期的な清掃による長寿命化の工夫

コスト抑制のために、交換までの期間に掃除機で表面のホコリを軽く吸い取る清掃を行うことがあります。これにより通気性が一時的に回復し、フィルターの寿命をわずかに延ばすことができます。

ただし注意点として、強く擦りすぎると不織布の繊維がほつれてしまい、逆にゴミを通り抜けさせてしまう(リーク)原因になります。また、目詰まりの根本原因である「繊維の奥に入り込んだ微細な汚れ」は掃除機では取れません。「清掃はあくまで緊急避難的な延命措置」と捉え、規定のサイクルで新品へ交換することが、装置全体の健全性を保つ唯一の方法です。

まとめ

プレフィルターは、空気中の大きな塵やホコリを最初に除去することで、HEPAフィルターの寿命を延ばし、装置全体の性能維持に多大な貢献をしています。

たかが粗塵取りと軽視せず、適切な材質の選定と、1〜3ヶ月ごとの定期的な交換・清掃を実行することで、空気清浄度を長期間安定して保つことが可能です。これは単なる衛生管理の向上だけでなく、メインフィルターの交換頻度を下げることによる「圧倒的なコスト削減」にも直結します。維持管理の第一歩として、まずは自社のプレフィルターの状態をチェックすることから始めましょう。

工場別
業務用エアシャワーメーカー3選
食品工場への
導入なら
食品工場の導入実績3,800台以上※1
HACCPに適した衛生環境をサポート
三共空調
三共空調公式HP
引用元:三共空調公式HP
(https://sankyo-ku.co.jp/advice.html)
  • 床には耐水性に優れたステンレスを採用し、フィルターも抗菌・防カビ仕様を選択可能。水や湿気が多い食品工場で長期にわたり衛生状態を保ち、HACCP対応も円滑
  • 現場組立式と柔軟なサイズ・レイアウト調整により、狭い搬入路や限られた設置スペースにも対応でき、食品工場への後付け導入もスムーズ
主な仕様内容
主なフィルター 制菌防カビ仕様中性能フィルター
HEPAフィルター
風速 制菌防カビ仕様中性能フィルター:25m/sec以上
HEPAフィルター:20m/sec以上
集塵性能 記載無し
捕集性能 ・中性能フィルタ:0.4~0.7μm粒子に対して40~50%以上
※70~80%以上となる高性能フィルタの選定も可能
・HEPAフィルタ:0.3μm粒子に対して99.97%以上
標準の床材 ステンレス
ジェット風 両側面+天井の3方向
電子部品工場への
導入なら
高い除塵性能と除電効果で
清浄度クラスISO5レベルに対応
日立産機システム
日立産機システム公式HP
引用元:日立産機システム公式HP
(https://www.hitachi-ies.co.jp/products/cleanair/airshower/high_efficiency/index.html)
  • 広範囲へのエアジェットの吹き付けが可能な独自技術を実装。粉塵一つも許されない電子部品工場に向く、風速30m/s±20%※2による除塵で品質の安定化を実現
  • プラズマクラスターイオンによる除電で着衣への異物の再付着を抑制するだけでなく、電子部品に致命的な放電リスクも減らすことができ、製品不良を低減
主な仕様内容
主なフィルター HEPAフィルター
風速 30m/s ±20%※2
集塵性能 記載無し
捕集性能 0.3μm粒子にて99.99%以上
(HEPAフィルター搭載)
標準の床材 建築床
ジェット風 片吹き
清掃工場への
導入なら
長年の集塵技術を活かした
粉塵環境特化の設計
アマノ
アマノ公式HP
引用元:アマノ公式HP
(https://www.amano.co.jp/kankyo/product/dc/dc_o/js-30.html)
  • 1951年から工場向けの集塵機を開発・製造してきた技術を活かすことで、一般的なエアシャワーでは対応しきれないほど塵埃が多い現場でも、粉塵の持ち出しを防ぎ、清掃負担・メンテナンスコストを軽減
  • グレーチング下部に溜まった粉塵は、掃除機※3を使えば手を汚さずに一括回収でき、従業員の健康リスクなど二次被害を防止
主な仕様内容
主なフィルター HEPAフィルター
風速 記載なし
集塵性能 99%以上(重量法)
捕集性能 0.3μm粒子99.97%以上
(DOPテスト)
標準の床材 記載無し
ジェット風 記載無し

※フィルターの種類:
制菌防カビ仕様中性能フィルター:空気中の微粒子(約1μm以上)を除去しつつ、菌の繁殖やカビの発生を抑える機能を持つフィルター。食品・医療・クリーンエリアなどの衛生管理に有効。
HEPAフィルター:0.3μm以上の微粒子を99.97%以上の高精度で捕集できる高性能フィルター。クリーンルームや精密機器、医薬品製造などに使用される。
※集塵性能とは:空気中の粉塵をどれだけ装置全体で取り除けたかの割合。/捕集性能とは:フィルターなどがどれだけ粉塵を捕まえたかの割合。
※1:※三共空調公式HP(https://sankyo-ku.co.jp/quality.html)(2000年~2024年の実績)
※2:初期における平均値。
※3:別売り。

工場別
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