空気中の微細な粒子を効率よく除去する「HEPA(ヘパ)フィルター」は、クリーンルームやエアシャワー、空気清浄機など幅広い分野で活用されています。
本記事では、HEPAフィルターの定義や構造、捕集効率、他のフィルターとの違い、主な使用用途、交換の目安について詳しく解説します。清浄度管理の要となるこのフィルターについて、正しい知識を深めていきましょう。
HEPAフィルターは、日本語では「高性能エアフィルター」と呼ばれます。日本産業規格の「JIS Z 8122」では、「定格風量で粒径が0.3μmの粒子に対して99.97%以上の粒子捕集率を持ち、かつ初期圧力損失が245Pa以下の性能を持つエアフィルター」と定められています。
世界的には欧州規格の「EN1822」も広く用いられており、こちらでは「H13」や「H14」といったクラスに分類されます。いずれにしても、目に見えないほど微細な汚れをほぼ完璧に食い止めることができる、非常に信頼性の高いフィルターを指します。
この「0.3μm(マイクロメートル)」という数字には、実は大きな意味があります。空気中の粒子には、フィルターの繊維にぶつかりやすい大きなものと、不規則に動き回って繊維に捕まる非常に小さなものがありますが、その中間にある0.3μm付近の粒子が、最もフィルターを通り抜けやすい(捕集しにくい)とされているからです。
「最も捕らえにくいサイズの粒子を99.97%以上カットできる」からこそ、それ以外のサイズの粒子もほぼ確実に除去できるという理論的な裏付けになっています。1万個の粒子のうち、わずか3個しか通さないという驚異的な精度が、高度なクリーン環境を支えているわけです。
よく比較されるものに「ULPA(ウルパ)フィルター」があります。ULPAはさらに高性能で、0.1μmの粒子を99.9995%以上捕集する基準を持っています。
半導体製造の露光装置周りなど、極限の清浄度が求められる場所ではULPAが選ばれますが、一般的な食品・薬品工場や精密機器の組み立てラインであれば、HEPAフィルターで十分な清浄度(ISOクラス5〜8程度)を確保できます。コストや空気抵抗(圧力損失)とのバランスを考えて、現場に最適な方を選択するのがスマートな手法です。
▶ ULPAフィルターについての詳細はこちら| フィルター名 | フィルター目地サイズ | どんな粒子を 捕獲できるか |
どんなシチュエーションに向いているか | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| HEPA | 0.3μm粒子を99.97%以上 | バクテリア、海塩粒子、顔料、油煙 | 食品工場、医薬品工場、一般クリーンルーム | クリーンルームの「心臓部」。除菌・集塵の標準的メインフィルター。 |
| 中性能 | 1μm〜5μm程度の微小粒子 | かび、花粉、小麦粉、セメント粉塵 | ビル空調、産業用クリーンルームの省エネ対策 | プレとHEPAの中間を担い、清浄度と電力コストのバランスを最適化。 |
| 活性炭 | 分子レベルの吸着 | 有機溶剤のガス、不快な臭気成分 | 化学工場、塗装現場、研究施設、脱臭対策 | 物理的なゴミではなく「臭い・ガス」を化学的に除去することに特化。 |
| ULPA | 0.1μm粒子を99.9995%以上 | ウイルス、タバコの煙、超微細塵 | 半導体製造、ナノテクノロジー、精密機器組立 | HEPAを超える圧倒的な清浄度を実現する、高性能フィルター。 |
| プレ | 10μm〜100μm以上の粗大な塵埃 | 毛髪、粗い砂、砂糖、大きなホコリ | 全てのエアシャワーの一次除塵、HEPAの保護 | 安価で交換が容易。後続の高級フィルターの寿命を延ばす「門番」。 |
HEPAフィルターのろ材(メディア)は、直径1〜10μm以下の極細ガラス繊維をランダムに配置して、紙状に漉き上げたものです。一見すると厚紙のように見えますが、ミクロの視点で見ると、非常に複雑に入り組んだ「繊維のジャングル」のような構造をしています。
この緻密な構造の中を空気が通り抜ける際に、浮遊している粒子が繊維に接触してトラップされます。最近では、より圧力損失を抑えた合成繊維(PTFEなど)を用いたモデルも登場しており、現場の省エネニーズに合わせて進化を続けています。
HEPAフィルターは、単に「網」でゴミを引っ掛けているわけではありません。以下の4つの物理現象を組み合わせて粒子を捕まえています。
特に「拡散」のおかげで、ウイルスのような極微細な粒子に対しても高い捕集性能を発揮できるのが、HEPAフィルターの大きな強みです。
HEPAフィルターの断面を見ると、ろ材がアコーディオンのようにジグザグに折り畳まれているのが分かります。これを「プリーツ加工」と呼びます。
折り畳む手法によって、限られた枠の中に広大な表面積のろ材を収納することが可能になります。表面積が広がれば、それだけ空気抵抗(圧力損失)を低く抑えつつ、一度に大量の空気を清浄化でき、さらにフィルターの寿命も延ばすことができるようになります。
欧州規格のEN1822では、フィルターの捕集効率によって細かく等級が分かれています。一般的にHEPAフィルターと呼ばれるのは「H13(99.95%以上)」や「H14(99.995%以上)」のクラスです。
これより一段階低いものは「EPAフィルター(E10〜E12)」、さらに高いものは「ULPAフィルター(U15〜U17)」と呼ばれ、区別されます。現場の要求清浄度に合わせて、どの等級のフィルターを搭載した装置を選ぶべきかを確認する指標として活用されています。
高性能なフィルターの試験では、「MPPS(Most Penetrating Particle Size)」という考え方が重要です。これは、そのフィルターにとって最も捕集が難しい(=最も浸透しやすい)サイズの粒子を特定し、その粒径において試験を行うというものです。
弱点となるサイズで規定の性能をクリアしていることを証明することで、全ての粒子に対して高い安全性を担保しています。最新の計測技術によって、ナノ単位での性能評価が常に行われています。
フィルターの出荷時や設置後には、「パーティクルカウンター」を用いた清浄度の測定や、DOP(フタル酸ジオクチル)粒子を用いたリーク試験(完全性試験)が行われます。
フィルター自体に穴が開いていないか、あるいは枠(フレーム)との間に隙間がないかをチェックするこの試験は、クリーンルームの信頼性を守るために欠かせない手順です。定期的な検査を行う手法こそが、異物混入事故を未然に防ぐ鍵となります。
HEPAフィルターの交換時期は、一般的に「6ヶ月〜1年」と言われることが多いですが、これはあくまで目安です。実際には、前段にあるプレフィルターや中性能フィルターがどれだけ機能しているかによって、寿命は大きく変わります。
外気導入が多い環境や、粉塵が発生しやすい現場では、半年を待たずに限界が来ることもあります。逆に、多段構成で完璧に保護されている場合は、1年以上性能を維持できるケースもあります。現場の稼働状況に合わせた個別の判断が重要です。
交換時期を見極める最も確実な方法は、差圧計で「圧力損失(空気抵抗)」をモニタリングすることです。ゴミが溜まって目詰まりしてくると、空気が通りにくくなり、差圧計の数値が上がります。
初期の抵抗値に対して「2倍」程度の数値になった時、あるいは装置の設計上の最終圧損に達した時が、交換のタイミングです。これを無視して使い続けると、風速が落ちてエアシャワーの除塵効果がなくなるだけでなく、フィルターが破損して汚染物質が漏れ出すリスクが高まります。
HEPAフィルターの交換作業時には、「物理的な衝撃を与えない」ことが鉄則です。ろ材の極細ガラス繊維は非常に繊細で、指で触れたり、工具をぶつけたりしただけで簡単にピンホール(小さな穴)が開いてしまいます。
また、医薬品工場やバイオ関連の現場では、フィルターに菌やウイルスが捕集されている可能性があるため、適切な防護服を着用し、取り外したフィルターを密閉して廃棄するなどの安全対策を徹底する必要があります。自分たちで行うのが難しい場合は、専門のメンテナンス業者に依頼するのが安心な手法です。
三共空調のエアシャワーは、オーダーメイドで企業の動線に合わせて設計でき、現場の生産効率と衛生レベルを同時に高めることが可能です。
ここでは、三共空調のエアシャワーの製品情報や強みなどを紹介します。
食品工場などの水洗いや薬液殺菌が頻繁に行われる環境では、設備の「サビ」や「腐食」が大きな衛生リスクとなります。三共空調のエアシャワーは、腐食耐性に優れたステンレス製の床パネルを標準仕様として採用しています。
また、メインフィルターには抗菌・防カビ性能を備えたタイプをラインナップ。現場が求める清浄度や予算に応じて最適な提案が受けられるため、食品業界において3,800台以上もの導入実績を誇ります。企業の信頼を長期的に守り抜く設計が、多くの現場で支持されている理由です。
既存の工場にエアシャワーを導入する際、ネックとなるのが「搬入経路」です。三共空調の製品は、パネルユニットを現地で組み立てる方式のため、狭い通路や曲がり角が多い現場でもスムーズに設置ができます。
人用の標準タイプはもちろん、多人数での通行や大型荷物に対応した仕様など、バリエーションも豊富です。工場のレイアウト変更や増築に合わせた柔軟なカスタマイズが可能なため、稼働を止めずに改善を進めたい企業にとって非常に心強い味方となります。
三共空調が提供するラインナップの中から、代表的なベーシックモデルを紹介します。

高速エアを均一に照射し、約15~20秒のシャワーで衣類表面の粒子を徹底的に除去。さらに、床面からの強力な吸い込み機能によって、剥離した粒子の再付着を確実に防ぎます。
手動・自動ドアの選択や、インターロック機能による空気の遮断など、安全設計も万全です。手指消毒が完了しないとドアが開かないといった連動システムも構築でき、作業者の衛生意識向上にも貢献します。
| フィルターの種類 | 不織布プレフィルター 制菌防カビ仕様中性能フィルタ、またはHEPAフィルタ |
|---|---|
| 吹出風量 | 19m³/min |
| エアージェットノズル数 | 18個 |
| 各部寸法 | 1,400mm×1,000mm×2,200mm |
| 電源仕様 | 三相200V |
HEPAフィルターは、極めて高い捕集性能を持つ空気清浄フィルターとして、さまざまな分野で活用されています。0.3μmの粒子を99.97%以上カットできるこの技術は、現代の高度な製造現場を支えるインフラそのものです。
正しい知識をもって用途に応じた選定とメンテナンスを行うことで、常に高水準の空気清浄を維持することができます。清浄度管理の基本として、HEPAフィルターの重要性を理解し、プレフィルターによる保護や差圧管理を通した適切な交換サイクルを確立しましょう。

| 主なフィルター | 制菌防カビ仕様中性能フィルター HEPAフィルター |
|---|---|
| 風速 | 制菌防カビ仕様中性能フィルター:25m/sec以上 HEPAフィルター:20m/sec以上 |
| 集塵性能 | 記載無し |
| 捕集性能 | ・中性能フィルタ:0.4~0.7μm粒子に対して40~50%以上 ※70~80%以上となる高性能フィルタの選定も可能 ・HEPAフィルタ:0.3μm粒子に対して99.97%以上 |
| 標準の床材 | ステンレス |
| ジェット風 | 両側面+天井の3方向 |

| 主なフィルター | HEPAフィルター |
|---|---|
| 風速 | 30m/s ±20%※2 |
| 集塵性能 | 記載無し |
| 捕集性能 | 0.3μm粒子にて99.99%以上 (HEPAフィルター搭載) |
| 標準の床材 | 建築床 |
| ジェット風 | 片吹き |

| 主なフィルター | HEPAフィルター |
|---|---|
| 風速 | 記載なし |
| 集塵性能 | 99%以上(重量法) |
| 捕集性能 | 0.3μm粒子99.97%以上 (DOPテスト) |
| 標準の床材 | 記載無し |
| ジェット風 | 記載無し |
※フィルターの種類:
制菌防カビ仕様中性能フィルター:空気中の微粒子(約1μm以上)を除去しつつ、菌の繁殖やカビの発生を抑える機能を持つフィルター。食品・医療・クリーンエリアなどの衛生管理に有効。
HEPAフィルター:0.3μm以上の微粒子を99.97%以上の高精度で捕集できる高性能フィルター。クリーンルームや精密機器、医薬品製造などに使用される。
※集塵性能とは:空気中の粉塵をどれだけ装置全体で取り除けたかの割合。/捕集性能とは:フィルターなどがどれだけ粉塵を捕まえたかの割合。
※1:※三共空調公式HP(https://sankyo-ku.co.jp/quality.html)(2000年~2024年の実績)
※2:初期における平均値。
※3:別売り。