エアシャワーはクリーンルームへ入室する最後の関所として、作業者や搬入物に付着した微粒子を瞬時に払い落とします。その性能を決定づけるのが内部に組み込まれたフィルターです。
この記事では、フィルターの種類・交換時期などについて解説します。
エアシャワーではプレフィルターが入口側で比較的大きな埃や繊維くずを捕らえ、後段のHEPAフィルターが0.3μmの粒子に対して99.97%以上の捕集効率で微細粉塵を除去します。
JIS Z 8122では初期圧損が245Pa以下かつ上記効率を満たしたものをHEPAと定義。より高性能が必要な領域では0.15μmの粒子を99.9995%除去するULPAが選ばれる場合もあります。
プレフィルターは不織布や金属メッシュなど、構造がシンプルで、目詰まり前に清掃・洗浄が可能なことが多いのに対し、HEPAフィルターはガラス繊維をミニプリーツ状に成形しているため、再生や清掃ができず、最終的には交換が必須です。
要求性能は現場の清浄度クラスで変わります。例えば、医薬・半導体ラインではISO Class5相当を維持するためH14クラスやULPAが用いられ、リスクアセスメントと差圧計の読値を根拠に選定することが重要です。
交換周期は使用時間と塵負荷で大きく変動しますが、一般的にはプレフィルターを数週間ごとに点検・清掃し、汚れが落ちなくなった段階で新品に取り替えます。HEPAフィルターは差圧計の読値が初期値の2~3倍、あるいは250Paを上回った時点が交換の目安です。
交換のサインとしては風量の体感低下、送風ノズルからの異音、差圧計の急上昇、吸込口の目視で確認できる黒ずみなどがあります。
定期点検では差圧計と風量計を用いた実測に加え、フィルター枠のシール材硬化やガスケット欠損がないか確認が必要。こうした付帯部品の劣化はエアリークによるバイパス流を生み、フィルター性能以前にクリーン空気の迂回を許してしまうからです。
フィルター交換作業はエアシャワーの主電源とブレーカーを遮断し、予期せぬ送風起動を防止することから始めます。停止表示札をスイッチに取り付け、作業者と第三者が誤って通電しないようにすることが必要。
次に、N95規格以上の防じんマスク、静電気防止手袋、保護メガネを着用し、交換スペースにクリーンペーパーや粘着シートを敷設して床への落下粉塵を捕集します。HEPAフィルター表面には高濃度の粒子が付着しているため、取り外し時の振動や衝撃を最小限に抑える姿勢で作業することが基本です。
交換を担当するスタッフは入室エリアの清浄度やバイオリスクに応じたガウン規定を守り、交換後に廃フィルターを防塵袋に二重に入れて密封してから場外に搬出。停止中の装置が再稼働する際に余分な粉塵を持ち込むリスクを削減できます。
エアシャワーの吸込グリルを外すとプレフィルターがフレーム内に収まっており、多くの機種では引き抜き式かワンタッチクランプ式です。
プレフィルターを取り外したら、フレーム内面をアルコール含浸ワイパーで拭き取り、付着ダストを除去。新品のプレフィルターは流れ方向を示す矢印が印刷されている場合があるため、矢印が風下を向くよう装着します。
背面または天井部にあるHEPAフィルターを交換する場合は、重量が数キログラムあるため二人作業で持ち上げると安全性の確保が可能。フレームガスケットが圧縮し切るまで均等にクランプを締め付け、片側だけを強く締め込まないよう注意してください。
ガスケットが古く硬化している場合は新しいものに交換し、シール面をIPAで脱脂してからフィルターを収めると漏れのリスクを抑えられます。最後に吸込グリルやノズルカバーを戻し、工具が内部に残置していないか確認してください。
交換完了後は装置の電源を入れて、送風ファンが定格回転数に達するまで待機。その上で、差圧計が初期抵抗範囲に収まっているか、制御盤のエラーランプが消灯しているかを確認します。
次に、風速計を用いてノズル口の風速を測定し、仕様書記載値の±10%以内であることを検証します。フィルター枠と筐体の継ぎ目には発煙ペンまたは蛍光リークテスターを当て、煙や蛍光剤が吸い込まれる現象がないかを目視でチェックすると、シール不良の早期発見に有効です。
粒子計数器をチャンバー内に設置し、運用基準を30分間継続して満たすことを確認できれば交換作業は完了。最後に保守記録に交換日・フィルター品番・初期差圧・作業者名を記載し、次回点検の基準点を残します。
プレフィルターは500×500mmの不織布カット品25枚入りが約22,000円※1で市販されており、1枚当たりは1,000円未満です。
一方、ポータブルエアシャワー用の純正HEPAフィルターは1枚8~10万円が相場※2で、サイズや捕集効率によっては12万円を上回るケースもあります。
年間ランニングコストは、プレフィルターを月1回交換する想定で1万円弱、HEPAフィルターを3年周期で交換すると年間3~4万円程度が目安。これに加え、作業工賃や清浄度測定費を加味することが重要です。
互換品を選ぶ場合はJIS適合証明、捕集効率試験成績書、耐熱ガスケット材の品質が確認できるかが判断基準となります。初期費用が2~3割安価でも、差圧の立ち上がりが早く交換サイクルが短いとランニングコストがかかり費用が高くなるため、購入前に圧損曲線と推定寿命を比較しておきましょう。
フィルターの捕集効率と通気抵抗は、吹出風速・粒子除去効率・騒音レベルに直結します。例えば、微細粉塵を徹底除去するために超高性能なULPAフィルターを採用しても、装置側のファン動力が不足していれば十分な風速が得られず、結果として除塵性能が低下してしまいます。
逆に、風量だけを重視してフィルターのグレードを下げれば、クリーンルーム側へ粒子が流入するリスクが高まります。重要なのは、「自社が求める清浄度」と「フィルター性能」、そして「装置自体の送風能力」の3つが最適にバランスされていることです。
導入やリプレイスを検討する際は、単にフィルターの仕様を見るだけでなく、各業界の衛生基準に合わせた最適な設計(フィルターとファンの組み合わせ)を提案できるメーカーを選ぶことが、長期的な清浄度維持の鍵となります。
以下のページでは、業界ごとの清浄度基準やメンテナンス性に強みを持つ、おすすめのエアシャワーメーカーを紹介しています。自社の現場環境に最適な一台を見つけるための参考にしてください。
エアシャワーのフィルター交換は、装置の性能と現場の衛生環境を保つための基本的な保守作業です。定期的なチェックと適切な交換を行うことで、トラブルを未然に防ぎ、リスクを抑えて効率的な運用が可能になります。コストと性能のバランスを見ながら、適切なフィルター管理を行いましょう。
さらに詳しくエアシャワーについて知りたい方は、次の記事もあわせてご覧ください。

| 主なフィルター | 制菌防カビ仕様中性能フィルター HEPAフィルター |
|---|---|
| 風速 | 制菌防カビ仕様中性能フィルター:25m/sec以上 HEPAフィルター:20m/sec以上 |
| 集塵性能 | 記載無し |
| 捕集性能 | ・中性能フィルタ:0.4~0.7μm粒子に対して40~50%以上 ※70~80%以上となる高性能フィルタの選定も可能 ・HEPAフィルタ:0.3μm粒子に対して99.97%以上 |
| 標準の床材 | ステンレス |
| ジェット風 | 両側面+天井の3方向 |

| 主なフィルター | HEPAフィルター |
|---|---|
| 風速 | 30m/s ±20%※2 |
| 集塵性能 | 記載無し |
| 捕集性能 | 0.3μm粒子にて99.99%以上 (HEPAフィルター搭載) |
| 標準の床材 | 建築床 |
| ジェット風 | 片吹き |

| 主なフィルター | HEPAフィルター |
|---|---|
| 風速 | 記載なし |
| 集塵性能 | 99%以上(重量法) |
| 捕集性能 | 0.3μm粒子99.97%以上 (DOPテスト) |
| 標準の床材 | 記載無し |
| ジェット風 | 記載無し |
※フィルターの種類:
制菌防カビ仕様中性能フィルター:空気中の微粒子(約1μm以上)を除去しつつ、菌の繁殖やカビの発生を抑える機能を持つフィルター。食品・医療・クリーンエリアなどの衛生管理に有効。
HEPAフィルター:0.3μm以上の微粒子を99.97%以上の高精度で捕集できる高性能フィルター。クリーンルームや精密機器、医薬品製造などに使用される。
※集塵性能とは:空気中の粉塵をどれだけ装置全体で取り除けたかの割合。/捕集性能とは:フィルターなどがどれだけ粉塵を捕まえたかの割合。
※1:※三共空調公式HP(https://sankyo-ku.co.jp/quality.html)(2000年~2024年の実績)
※2:初期における平均値。
※3:別売り。